過去の事例からⅢ

初診日についてこんなこともありました。

Cさんは、会社員であった平成2年の健康診断で肝障害を指摘されました。すぐに精密検査を受け、B型ウイルスを原因とするHB肝炎と診断され、それ以後は抗ウイルス剤等で治療を続けていましたが、病状は少しづつ重くなり、平成15年に肝硬変と診断されてしまいました。幼少期の予防注射によりB型ウイルスに感染したとみられることから、国との裁判上の和解が成立し、給付金も受け取っていました。

その後も何とか働いている状態でしたが、だんだんと働くこともつらくなってきたため、障害年金の受給を考え、当事務所に依頼をしてこられました。

年金事務所に申請書類一式をもらいに行くと、幼少期の予防注射が原因なので、その時が初診日になるため20歳前の傷病となり、障害基礎年金での申請になりますとの説明を受けました。
しかし、初診日とは「障害の原因となった傷病について初めて医師の診断を受けた日」とされています。幼少期の予防注射は傷病ではなく、将来それによる発病も予測できるものでもありません。ウイルスに感染し、キャリアとなっても必ずしも発病するとは限りません。


発病したうえで診察を受けた時が初診日だと考えていましたので反論をしたのですが、あくまでも予防注射の時が初診日だとの一点張りでした。会社員の時に受けた健康診断で指摘され、病院で精密検査を受けた日が初診日とならなければ障害厚生年金での申請はできませんのでこちらも必死でした。

そのため、他の年金事務所にも行き確認をしたのですが、やはり同じ回答で、厚生年金での申請は無理な状況でした。納得がいかなかったことや障害厚生年金で受け付けてもらうための突破口となるよう、年金機構に対し今回の事例とこちらの考えを載せた文書を作成し初診日の考え方を照会しました。

照会に対する回答は時間がかかりましたが、「障害年金は、裁定請求書に添付された診断書、病歴申立書、医師の受診状況等証明書などにより、傷病の原因となった疾患との因果関係や発症の時期を医学的見地から確認・判断し、初診日を確定したうえで、当該初診日から1年6ヶ月を経過した日(障害認定日)に、障害の程度を認定する。」「提示された事例についても、B型ウイルスのキャリアであったことの確認やHB肝炎との因果関係の有無について確認する必要があり、包括的に、初診日やその考え方について示すことはできない。」との回答をもらいました。(回答は要旨を掲載しています)

はっきりと、どの時点が初診日になるとの回答は得られなかったのですが、少なくとも単純に初診日は予防注射の時だとは言えず、各事例につき提出書類により確認判断していくということがわかりましたので、それなら障害厚生年金での申請をして判断してもらおうと考えました。

初診日は予防注射の時だと主張する年金事務所に障害厚生年金に受け付けてもらうため、初診日は審査しなければわからないとの年金機構の回答を受けているので、障害厚生年金での申請をし機構の判断を仰ぎますとの代理人の申立書を作成し提出しました。さらに、Cさんは過去の病院での受診記録などの資料をよく保存されていたこともあり、年金機構の判断材料となるよう用意できるものはすべて添付しました。

初診日がいつと判断されるのか、また、つらくなっているとはいえ、まだCさんは働いていましたので心配しながら結果を待ちましたが、障害厚生年金2級に認定されました。

今回の申請では、最初から強引に障害厚生年金で申請することも考えたのですが、あくまでもできるだけ穏便に受け付けてもらうことを優先しました。回り道をしながらも初診日に対する考え方を確認するいい機会だった気がします。

なお、年金機構の回答から考えても、初診日がいつになるかを判断するのは審査部門であって年金事務所ではありません。その点は知っておくべきことではないかと思います。また、年金事務所では受け付けてもらうことが最も重要なことですので、対峙した状態を打破するためにはどうすればいいかを考えることも大切なことだと思います。